食品工場改修のワンポイント
設備と環境対策
食品工場内の温度、湿度、空気清浄度は、加熱・冷却・乾燥などの製造工程によって大きく変動します。また、防虫や省エネ対策のためには高い気密性が必要ですが、そのことが湿気の滞留、結露やカビの発生、温度による作業環境の悪化を招くこともあります。これらの要因を防ぐため、換気、除湿、冷暖房、空気清浄など、さまざまな手段を駆使して、最適な空気環境をつくります。
空調における衛生環境配慮対策
空調機の設置方法には慎重な配慮が必要です。例えば製造ラインの上部に空調機がある場合、製品に結露水が落下するリスクや機器メンテナンスのたびに製造ラインを移動する手間など発生します。また、作業環境では長時間同じ位置で作業していると冷風によるドラフト(過度な冷温感)を強く感じる場合もあり作業環境改善を含めた対策も必要です。
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天吊型空調方式
空調機の設置場所については、定期的なフィルターの交換などのメンテナンス性を重視すると共に、作業員に風が直接強く当たらないように風向や風量に配慮して設置する必要があります。
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ソックダクト空調方式
ソックダクトは微細な繊維でできた空調用フィルターで、微風吹き出しにより、埃の舞い上がりや食材の乾燥を抑えるとともに、作業員へのドラフト防止など作業環境の改善を図ることができます。
室内の陽圧化対策
食品工場では室内の陽圧化対策(外調機による空調給気)によって、清潔区域から準清潔区域、汚染区域に向かって空気の流れを作り、清潔エリアへの汚染空気の流入防止を図ります。
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外調機設置状況(屋外設置型)
外調機は新鮮空気を取り入れると同時に外気をある程度まで冷暖房、加湿、除湿などの処理を行う工場内の陽圧化には欠かせない設備です。
特に空調機の設置には、フィルター交換などの維持管理性に配慮する必要があります。 -
微差圧ダンパー
室内の圧力を常に一定の陽圧に保つために、給気による余剰空気を微差圧ダンパーにて排出調整します。
パスダクトも同じような役割を果たしますが、微差圧ダンパーのような調整機能を持っていません。
排熱・排湿対策
加熱調理室などでは、オーブンによる加熱や調理釜などからの水蒸気により、室内が過剰な熱や湿気で衛生環境だけでなく、作業面においても厳しい環境が強いられる可能性があります。またフードからの排気量が大きいため、空調とのバランスを崩しやすく、作業環境や省エネ性の観点からも対策が必要になります。
問題のメカニズムをよく把握したうえで、熱環境を仕切る垂れ壁や2重フード、スポット空調など適切な方法での対策が求められます。
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局所冷房
スポット空調は室内全体を広く空調するのではなく、必要なエリアだけを局所的に冷房するので、冷房能力を大幅に低減できます。冷風が直接当たるため、体感温度が下がり、設定温度を抑えることもできます。
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給排気型2重フード(横吹き出しタイプ)
局所排気フードは多量の空気を排出するため、室内空調への影響が懸念されます。給排気型2重フードでは局所的に給気と排気が効率よく循環できるため、空調エネルギーのロスを抑えることができます。
冷蔵・冷凍庫の天井裏結露対策
工場天井裏の空間は防火区画などがない限りオープンですが、各室の室温が異なると天井内の環境にも影響が及んできます。たとえば冷蔵・冷凍エリアでは常温環境室の天井上部と比べて冷えやすく、湿気の滞留や結露などの発生リスクがあります。こうした天井内の湿気・結露対策には、ファンによる空気の循環や除湿器により天井内の湿度を下げる方法がとられています。
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天井裏の除湿機設置状況
ファンにより空気の循環で、天井内の湿気滞留を防ぐだけでなく、除湿機を設置し、湿度上昇を抑制することも効果的な対策です。